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過去は有事のドル買いの時代もあった
何年も前から、世界のどこかで政治や金融市場の大きな混乱があると、投資家は安全資産とされる米ドルに資金を振り向けてきた。
しかし、過去1カ月にわたる北アフリカ騒乱では、投資家はおおむねドルを避け別の逃避先を模索。ドル以外の従来の安全資産に目を向け、日本円やスイスフランなどを買っている。
特に意外だったのはユーロ投資だ。ユーロは従来ドルよりリスクが高いとみられており、ユーロ圏の債務危機がまだほとんど解決されていないことからこの見方は強まっていた。
このことは、ドルが安全資産という地位を失ったかどうかをめぐる議論に発展している。
ファロス・トレーディング(米コネチカット州スタンフォード)のダグラス・ボースウィック氏は「過去20年、世界経済に何らかの不確定要素が浮上すると投資資金は常にドルに流れた。
しかし、過去2週間はドルから大量の資金が流出している」と語る。
同氏によると、これは有事の資金逃避先としてのドルへの信認が損なわれたことを反映した動き。
1月にチュニジアで始まり、周辺国に拡大した騒乱の性格を反映しているとの見方もある。原油相場の上昇によるインフレ圧力で欧州での利上げの可能性が高まると考えられている一方、米連邦準備理事会(FRB)は、エネルギー価格上昇にもかかわらず、変動の大きい食品とエネルギーの価格を除いたコアインフレ率が抑制されているとの考えを変えていないとしている。
この論理でいくと、投資家には当面、ドルより優れた安全資産があることになる。
バークレイズ・キャピタルの北米為替部門ジェフ・ヤング氏は「安全資産としての買いは、衝撃が厳密にどんな性質なのかに大きく左右される」と説明。
「リスク回避を誘発するような衝撃でも、予想されるコストから米国が受ける影響がスイスに比べ不釣り合いに大きければ、ドルは安全資産とみなされないだろう」としている。
政権打倒につながったエジプトのデモが始まる前日の1月24日以来、米ドルはいわゆる先進国通貨に対して下落している。
ただ、先週大きな地震に見舞われたニュージーランドドルに対する相場は例外だ。
特にユーロの対米ドル相場上昇率はニューヨーク時間の2月28日午後遅い時点で1.2%に達している。
エジプトでデモの始まった1月25日には、ユーロはドルに対して2セント超上昇し1ユーロ=1.39ドル近辺をつけた。過去の安全逃避とは対照的な動きだ。
先の金融危機では、ドルは約24%上昇している。
BCAリサーチのアナリストらは、一部投資家が安全資産としてより魅力的な金に目を向けていると指摘。
「この評価に賛成だ」と書いている。金相場は2月に5.7%上昇と、月間ベースで2010年4月以来最大の上昇率を記録している。
ユーロ買いについては、過去数週の原油急騰を受け、欧州中央銀行の方に年内利上げの可能性が高いとの確信が強まっていることを挙げるストラテジストが多い。
一方のFRBは、原油相場上昇をインフレリスクだとみておらず12年まで金融引き締めはしないと広く考えられている。
日本経済も低迷しており、同国が石油を実質すべて輸入に頼っていることを指摘する向きもある。
ただ、相変わらず円を安全資産とみた買いがある。
同氏は「肝心なのは反射的な反応だ」と述べた。「最近の反射的反応は、ユーロを買ってドルを買わないこと。
スイスフラン、ドルに対し200日移動平均割る
ドルはスイスフランに対し、現在0.8843フランにある200日移動平均を超えてじり高になっている。シティグループの為替アナリストは、ドルは2010年7月以降、200日移動平均を割り込んできたので、この水準はある程度の重要性があるはずだと言う。ドルは現在、0.8870フラン近辺で推移している。